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HD-SDI対応HDVキャメラのCCUソフトコンソール1.1の運用テスト

 キヤノンのH1やG1、H1に対する画質評価はすでにインターネット上で十分な情報がありますので、千里ビデオサービスでは今回パソコンをCCUに変えるソフトウエア「コンソール1.1」を中心にした運用テストを行いました。つまり画質テストを期待された方には申し訳ありません。全く参考にならないと思います。しかし印象としては使い方次第でONAIRにも耐えうる画質であることは確かです。またHD-SDIライブスイッチャーを利用した簡易中継システムを低価格で構築できる要素も備えています。改造すればタリー・リターンにも対応出来そうです。
現在コンソールはサポート終了となりましたが、欧州のCanonサイトでダウンロードできるようです。
興味のある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

XH G1の全体像 XL H1の全体像
 CanonのHD-SDI出力可能なHDVカムコーダー2機種の運用テストを行いました。テストには第一線で活躍されているVEさんやキャメラマン、照明技師、監督、そして笹邊が参加している「DAVICS2 映像作るヒトのSNS」のメンバーも参加し、三和ビデオセンターの撮影スタジオで行いました。
 今回テストを「運用テスト」としたこのの理由は上記のHDVカムコーダーをコンピューターを使って色調整やアイリス操作が遠隔で行える「コンソール」というソフトウエアをVEさんに検証してもらいたかったことと、上記のキャメラを撮影技術の観点から操作性や性能を評価していただくためです。
 テストには劇団シアターOMに協力していただきました。シアターOMの代表である稲森誠さんはNHKやMBS、ABCなど多くのメディアに登場する、関西で知らない人は誰も知らないものの、知ってる人はとことん知っている俳優でです。映画出演、テレビドラマ出演、CM出演等、多くの実績を持ち、劇団として多くの若者達を育成しています。最近では「芋たこなんきん」や「難波金融道ミナミの帝王」シリーズなど。

今回は、の看板女優の前川奈津さんにモデルをしていただきました。

前川奈津さんスタジオ入り
メークルームの前川奈津さん
 早速メークルームで出演準備に入ります。「最初の衣装はアレにしま〜す。」
フィッティングに入る前川奈津さん
 三和スタジオのメーク室は広くて明るく清潔と、前川さんも大喜びです。
「覗いちゃダメですよ!」
ホリゾントライトにフィルターを挿入
 前川さんが着替えている間にスタジオの準備も進みます。
センチュリーにカポックを取り付ける照明さん
 照明はマジックハンドの太田さんと塚原さんがお越しいただきました。新人の塚原さんはなんとマジックハンド撮影部所属です。
スポットをカポックにあてています
 照明の準備も整い、いよいよ前川さんの登場です。
萌え〜!メイド姿の前川奈津さん
 あ!!!
セーラームーンかと思っていたら、なんと前川さんはメイドで登場です。
前:「ご主人さま、今日はこの衣装でよろしかったしょうか?」
笹:「は、はい、それでよろしゅうございます」
 オヤジたちの萌え〜にさらなる萌え〜
丹念なメークを施します。
これじゃテストのつもりが、怪しい撮影会に!、なんてことはありません。しかし前川さんのメードスタイルにこのあとスタジオは騒然!
テスト会場は萌える撮影会会場に...
最終メークをする前川奈津さん
前川奈津さんを入れて照明の調整をします
 座っているだけで可愛らしい前川さんです。照明の微調整ののちに色調整を行います。
G1と前川奈津さん
 当初XL H1を中心にした運用テストを考えていましたが、やはりコンソール1.1の機能をフルにサポートしたXH G1に興味が集中します。
G1のLCDに映った前川奈津さん
 キャメラのHD-SDI出力は波形モニター、DVCPRO HD、HD-SDIモニターに繋がると同時にIEEE1394でコンソール1.1をインストールしたVAIOに繋ぎます。
このテストに使用したVAIOはPentium4モバイル1.7GHzですから、一般的なノートパソコンよりは非力です。とりあえずコンソール1.1を走らせられるギリギリのスペックというところです。
※コンソール1.1の推奨環境はPentium4/3.2Ghz以上ということになっています。

 コンソール1.1をインストールしたVAIOのデスクトップです。一応15吋以上のモニターということでは動作環境に入っていますが、これでは狭すぎますね。1280もしくは1440のワイドディスプレーが理想的な動作環境路いえるでしょう。ただし、コンソール1.1は2007年10月19日に販売を終了してしまいました。残念!ここでは千里ビデオサービスがライセンス購入(70,350円税込)したダウンロード版で動作検証します。すでにコンソール1.1をお持ちの方はインストーラ、ライセンスキーは大切に保管してください。
コンソール1.1のスクリーンショット
 下はコンソール1.1を動作させているときのCPU使用率です。ほぼ100%使用されています。やはり快適に使うにはPentium4/3.2GHzというのは本当です。Core2Duoなどの並列処理に対応しているかどうかは判りません。Core2Duoで快適に走ればノートパソコンでもストレス無く使うことが出来るでしょう。
タスクマネージャーのスクリーンショット
ベースの様子  対応策として録画ウインドウや再生ウインドウを閉じることでCPU使用率は半分以下に抑えることが出来ますが、録画ウインドウが無ければ収録できているということが判らず、これはハードディスクへ収録する場合は閉じない方がよいでしょう。もちろん閉じていても記録されるのですが、せめてVTRのタイムコードは別ウインドウとして大きく表示する必要があります。是非キヤノンに対応していただきたい項目です。
 快適ではないものの、とりあえず非力なVAIOでも動作できるので、様々な操作を検証してゆきます。
 初めてお目にかかるソフトウエアということで、目の前の萌え〜には目もくれず、次々に検証を行ってゆきます。まさに映像職人の世界です。
コンソール1.1を検証するVEさん
同じく検証中のVEさん  手前はDAVICS:2の仕掛け人であるかばさん。操作はVEのAさん、そしてキャメラマンのTさん達。
マウスの操作
 カーソルやタブきーよりもマウスとホイールを使う方が快適やね!
 ノートパソコンでもマウスの方が使いやすそうです。(._.) φ メモメモ
コンソール1.1のキャメラコントロール
 もっとも使用頻度の高いコントロールウインドウはリモコンに近いデザインを持っていますが、出来ればチャンネルゲインやペデスタル、ニーなども入れて欲しいところです。
実際に運用してみるとアイリスは0.2ステップで数字は変化(2クリックで数字が変化)しますが、波形モニターを見ると1クリックごとにアイリスが変化します。つまり1絞り分を1/8ずつ加減出来ると言うことです。
F2.0/2.2/2.4/2.6/2.8と表示されますが、実際にはF2.0/2.1/2.2/2.3/2.4/2.5/2.6/.27/2.8となります。これはソフトCCUということであまり期待していなかった人にとっては驚きでした。そしてレスポンスですが、モニターではほぼリアルタイムに変化します。ただしデスクトップの録画ウインドウはPCのスペックのせいか、かなり遅れて見えます。外部モニターを繋いでコントロールのみをPから行うという使用方法が非力なPCではコンソールをリアルタイムに使うコツだと思います。
カラーコントロールのスクリーンショット
 これはディティール調整のウインドウです。
スキンディテールやスカイディティールのエリアを選択して効果量を加減します。ただしVEさんの意見ではエリア選択や、効果量のステップが荒すぎるということです。これはコンソールの機能と言うよりH1/G1の持つ機能からくることで、キャメラの調整機能そのものが改善されなければ実現できません。放送機器の調整機能に慣れたVEさんからは厳しい意見が出ます。
 なお、カラーコレクションとディテールについてはG1/A1でのみ動作し、H1では使用できません。またカラーコレクションかディテールのパネルをさわる場合はカスタムプリセットは使用できません。おそらくキャメラのソフトウエアが同時に立ち上げられないことによるものだと思いますが、このあたりも改善していただきたいと思います。
運用時のスクリーンショット  収録時には左の3つのウインドウを開いていれば必要な操作は可能です。ただしタイムコードは見たいというか、見えなければ不便です。そしてOHCIによるDVコントロールは是非対応してもらいたいと思います。
WindowsからDVのコントロールは決して難しいことではないので、是非VTRコントロールを追加してひしいですね。
実際にG1を操作するMさん
 色調整を終えて今度はキャメラの操作性などを検証しています。キャメラマンはCATV局のMさん。TVは仕事ですが、趣味は写真です。笹邊と同じくハッセルブラッドユーザーで、WEBでも沢山の写真を公開されています。この日も前川さんの写真をバシバシと撮って居られました。う〜ん、やっぱり萌え〜撮影会?
キャメラの操作性を検証中
 さすがにキャメラマンですね。Mさんがキャメラを触り出すとみんなVE卓からキャメラの周りに集まり始めます。フォーカスやズームなど、体に触れる部分の検証を中心に厳しい意見が交わされます。
 H1の液晶ビューファインダーは残像がひどく見にくい。そしてフォーカスが合っているかどうか判らない。という意見です。そしてG1の2.8吋ではソニーやパナソニックの液晶に慣れた人には小さすぎるという意見も出ました。
 このときにH1用モノクロCRTビューファインダーも検証しましたが「フォーカスははっきり見えるものの、画面が小さすぎる」ということです。モノクロファインダーは池某社のHCシリーズの4:3サイズのものを垂直振幅を縮めているだけで、16:9初期のスタイルになっています。たしかにこのサイズのファインダーを一日のぞくのは辛いですね。やはりハイビジョン用モノクロファインダーは最近の2吋ビューファインダーに慣れた目には小さすぎます。
前川奈津さんのダンス?を撮影
2つめの衣装に着替えた前川奈津さん
 さて、メイドの次は遂にセーラー服の登場です。前川さんのサービス精神、失礼、役者魂に頭が下がります。
 オヤジ達は彼女の萌え〜に大満足?です。
前川奈津さんのセーラー服姿を撮影する笹邊
 メイド姿もいいですが、セーラー服姿がまだまだ似合う前川さん、やっぱり若いですね。キャメラを振っているのは今回の仕掛け人である笹邊です。
スキンディティールのエリア選択画面
 これはスキンディティールのエリア選択画面です。肌色部便が選択されていることがよくわかります。
 今回のテストで感じたことはスキンディティールはHDの場合はあまり効果が無いということです。つまりSDで解像感を上げるために付けていたディティールはHDではかえって邪魔になることが多く、全体のディティール量が少ないHDではI軸付近(コンポジット的な表現ですが)のディティール量を減らすだけではたりないと言うことです。つまりディティール量を減らすと言うよりも、肌色付近をぼかす必要があるかもしれません。これはHDキャメラの今後の課題ではないでしょうか。
 今回のテストでひとつ失敗したことは前川さんが素肌美人であるということでした。もうすこし年齢を重ねたモデルでなければスキンディティールのテストには適さないということですね。(笑)
肌色部分のディティール調整
前川奈津さんの肌色を調整するVEのYさん
 カラーコレクションを楽しむVEのYさん。若い子が映った画面ならなにをやっても楽しいですね。
これは予想外の問題!
Canonで収録したテープがソニーのVTRで再生できない!
 このテストを行うまで知らなかったことです。24Fや30Fで収録した場合、ソニーのHDVデッキでは再生できないということです。VEのAさんはご存じでしたが、笹邊はこの日初めてしりました。信号の形式が違うために同じHDVでも他社製では再生できないためH1やG1で再生しなければなりません。ただしHD-SDIで収録したテープは問題有りません。ポストプロダクションにCanonのFn30Fで撮影したHDVテープを持ち込む場合は注意が必用です。ただしVAIOに収録したmpeg2tsファイルはWindowsMediaPlayerやEDIUSなどでは問題なく再生出来ました。コンソール1.1はバーチャルVTRだということを思い出しました。
HVR-Z1JなどのSONY VCRではキヤノン30Fは再生出来ない
30Fで収録したMPEG2TSを856×480のWMVに変換したファイルをアップしています。任意の場所で停止するとインターレースしていないことが判ると思います。現在各社からプログレッシブ記録できるHDVが出ていますが、HD用途以外にもWEBなど、様々な分野で活用できるのではないでしょうか。

今回のG1/H1をHVR-Z1Jと並べてみました。左からZ1J、G1、H1です。さすがにH1は大きいですね。
Z1J、G1、H1の大きさ比較
 今回のHD-SDI対応HDVキャメラのCCU運用テストでの結果をまとめると
  1. パソコンをCCUに変身させる「コンソール1.1」は現時点では随所に問題もあるものの、小型HDVカムコーダーをして大型機と同様のCCU運用を可能にし、高度なEFP制作環境を構築できる可能性を持っている。
  2. HD-SDI出力を装備したことにより、DVCPROHDやHDCAMを外部VTRとして回すことが可能になり、HDVの高圧縮から解放されたより高品位な作品制作に小型HDVも利用できる。これはコスト面だけではなく、小型特機を用いた映像制作には大きな効果がある。
  3. 「コンソール1.1」のユーザーインターフェースが解りやすく、VE経験の少ないスタッフであっても高度なトーン調整が出来る。とくにカスタムプリセットの効果比較はユーザーに解りやすいスタイルと機能で、これは放送機器にもなかった便利な機能である。
  4. H1は液晶ファインダーが見づらく、別売りのモノクロCTRファインダーもCRTが小さく使いにくい。またG1の液晶ディスプレーも最近のHDVモデルとしては小さい。キャメラマンにとってはキャメラの画質よりも見る物、ふれる部分、操作性がなによりも重要だ。側面ダイヤルを残すことにこだわり過ぎた結果、他社のような左側面に搭載出来なかったのだろう。それならばZ1Jのような位置に3.5吋クラスを搭載してほしかった。
  5. 24F/30Fを他社と足並みを揃えて再生互換生を保ってもらいたい。まして据え置きVTRを発売していないキヤノンであればポストプロダクションでの再生を考えるべきである。
 今回のテストで笹邊はあることに気づきました、これまでHD-SDIによる外部VTRばかりを考えていましたが、バーチャルVTRとしてのコンソールの利用です。テスト後VAIOに記録したMPEG2TSファイルをデスクトップ機で再生したところ、その画質はHDVテープと同等と言うよりも、ブロックノイズも発生せず、テープよりも安定したものでした。もちろんキャプチャーの必要もありません。つまりHD-SDIを出力できないXH A1であってもクローズドな環境で有れば新しい撮影スタイルを構築できるということです。もちろんカムコーダー本体のHDVテープはバックアップとして回すことになりますが、収録がスタジオで有れば編集ソフトウエアの入ったPCで現場プレニューもOKカットのみ繋いだり、台本に合わせて並べ替えたりすることが可能になります。今後他社からもOHCIを利用したCCUソフトやストレージソフトが出てくることで、収録スタイルは大きくかわることでしょう。ますます面白くなる小型HDVの世界は限りない可能性を秘めているのではないでしょうか。

今回はキャメラ本体の評価は行いませんでしたが、少しだけ写真による紹介を行っています。
XL H1         XH G1
今回の運用テストにはシステムファイブ・三和ビデオセンター・マジックハンド・シアターOM・DAVICS:2にご協力いただきました。深くお礼を申し上げます。もちろんキヤノンには最大のご協力をいただいております。(敬称略)