映像制作フィールドレポート   LIST view  RSS
映像制作会社の代表が現場で印象に残ったことなどを写真やビデオキャプチャーで綴る撮影技術日誌
(WEBへの公開は制作会社、クライアント、出演者の許諾をいただいておりますが二次利用はご遠慮下さい)
2010年01月01日(金)  2010 EOS5D Movie with Nikkor Lenses
2010年の事業計画としてEOS動画の撮影システムの構築を行います。周辺機器にさきがけ、EOS5D MkU、EOS7Dでの動画撮影に適したレンズをご案内いたします。
様々な検討を加えた結果として、絞り環のあるマニュアルフォーカスレンズがEOS動画に最適であることがわかり、現在保有しているニコンFマウントのマニュアルフォーカスニッコールレンズからチョイスしてみました。

【口径72oの口径比一定の広角系標準ズームレンズ】

左はAi Zoom Nikkor 25-50mm F4S。フルサイズのEOS5Dで水平画角72度〜40度が得られるワイドズームレンズです。湾曲、倍率色収差が良好に補正され、EOS動画の標準レンズとして適しています。
右はAi Zoom Nikkor 35-70mm F3.5。水平画角54度〜29度になります。両レンズともズームリングの回転方向が放送用TVズームレンズと同じ方向でズームイン・アウトするため違和感無く使用できます。

【標準画角から望遠300oをカバーするEDレンズ採用のズームレンズ】

左はAi Zoom Nikkor ED 50-300mm F4.5、右はAi Zoom Nikkor ED 50-300mm F4.5Sで、光学系はEDレンズ2枚を含む同じものが採用されていますが、Sタイプは重量が旧タイプの2,200gから1,950gになりました。僅か250gの差ですが、鏡筒も細くなったために体感質量は遥かに軽く感じます。ともにEDレンズを採用することで単レンズに匹敵する解像度、収差補正がなされています。水平画角は40度〜7度です。
これらのレンズも広角ズーム同様、ズームリングの方向はTVズームレンズと同じ回転方向でズームイン・アウトします。

【超広角系単焦点レンズ】

左はAi Nikkor 15mm F3.5S、右はAi Nikkor 20mm F2.8Sです。15oF3.5の水平画角は100度(対角画角は110度)で13oF5.6の水平画角108度には及ばないものの、放送用HDショートズームHJ14e×4.3B IRSEのワイド端水平画角96.3度よりも広い画角は圧巻です。明るさもF3.5と旧のAi Nikkor 15mm F5.6やAi Nikkor 13mm F5.6Sに比べて1絞り以上明るく照明部の負担が少なくなります。
超広角レンズにみられる周辺光量の低下も全画角に一様な明るさを持つように配慮され、歪曲収差も良好に補正されているので、建造物や室内での撮影をはじめ、特異な効果を狙った撮影にも威力を発揮します。また、ニコン独自の近距離補正機構が採用され、近接撮影にも鮮明な映像が得られます。
一方小型で手軽なAi Nikkor 20mm F2.8Sも水平画角84度の超広角ながらF2.8の明るさが得られるため、オールマイティーに使用できるレンズといえます。なお、写真には写っていませんがAi Nikkor 28mm F2.8や50o標準レンズと同じ明るさを持つAi Nikkor 35mm F1.4Sも用意しています。

【浅い被写界深度によって独特の雰囲気が得られる大口径中望遠レンズ】

口径比F2.0、そしてF2.8のAi Nikkor 135mm F2SとAi Nikkor ED 180mm F2.8Sです。
135oはF2.0という大口径ながら諸収差が良く補正され、開放絞りからゴースト、フレアーが少なく、コントラストの高い画像が得られます。小型カムコーダーでは得ることが出来ない浅いフォーカスによって独特の雰囲気をかもし出します。
Ai Nikkor ED 180mm F2.8SはEDガラスの採用で色収差が良く補正されて、長焦点ながら開放絞りからコントラストがよく、フレアーの少ない画像が得られます。
水平画角は135oが15度、180oが11度です。
この他にもAi Nikkor 105mm F2.5S、Ai Nikkor 135mm F2.8、Ai Nikkor 200mm F4も用意しています。

【遠近感の圧縮効果は超望遠独特の表現】

左はAi Nikkor ED 400mm F5.6S(IF)、右は俗にサンニッパと呼ばれるAi Nikkor ED 300mm F2.8S(IF)です。ともにEDガラスが採用された高性能レンズでインナーフォーカスが採用されています。
Ai Nikkor ED 400mm F5.6S(IF)は重量1,200gと軽量で写真では手持ち撮影が出来る400oとして重宝しましたが、動画ではしっかりとした三脚とヘッドは必須です。写真はビンテンVision3に載せていますが、実際の運用ではVision11やVision100を使います。
Ai AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF)はF2.8の大口径によってテレコンバーターTC14BやTC301を併用しても十分な明るさ、シャープネスが得られます。また全長192o、重量990gと小型軽量化されたAi Nikkor ED 300mm F4.5S(IF)も用意していますので、コンパクトなロケにも300oを用いることが出来ます。もちろんEDレンズ&インナーフォーカスが採用されています。
水平画角は400mmF5.6が5度、300mmF2.8はノーマルでは7度ですが、TC14Bを装着して420oF4相当で水平画角は5度、TC301装着では600mmF5.6相当で水平画角は3度になります。

【魚眼レンズやマクロレンズなど】

左は対角画角180度が得られるAi Fisheye Nikkor 16mm F2.8Sです。15o F3.5の湾曲しない超広角レンズに対して16mm F2.8Sは等距離射影方式が採用された魚眼レンズで、そのデフォルメ効果が大変ダイナミックです。また、デジタル処理によりOP Fisheye Nikkor 10.5mm F5.6のような正射影的な効果を加えることも可能です。
右はAi AF Zoom Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6Dというニコンだけが発売したマクロ撮影用ズームレンズで、ズーム全域で約0.37mまで被写体に接近することが可能です。最大撮影倍率は70mm時1/3.2倍、180o時は約1/1.32倍となり、ワーキングディスタンスは約12cmです。
EDレンズを採用することで色収差を抑え高画質を実現し、フルハイビジョンの接写でも高い解像度が得られることはもちろん、三脚を前後ささることなくフレーミングできるために、通常のマクロレンズの数倍の速さで撮影を進めることが出来ます。AFレンズですがEOS5Dに装着する場合はマニュアルフォーカスで使用します。
この他にもマクロレンズはAi Micro Nikkor 55mm F2.8S、Ai Micro Nikkor 105mm F2.8S、Ai Micro Nikkor 200mm F4S(IF)を用意しています。(写真用に栃木ニコン製のAF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G EDがありますが、絞り環が無いためEOS5Dでは使用できません。)

以上弊社が現在構築しているEOS動画用のレンズシステムを紹介しましたが、すでにCMやプロモーションではかなりの率でEOS5D MkUの動画が使用されています。照明部の話では現場の半数がEOSという技師もいるくらいの状況です。現場でも「2010年の動画制作ははいったいどうなるのだろうか?」と異口同音の状態です。しかしここはもう暫く様子を窺う状況が続きそうな感じです。
2010年、今年は寅年ということもあってまさに虎視眈々でしょうか。しっかりとバネを縮めて、一気にジャンプを狙いたいところです。